ピルは主に卵巣に由来する二つの女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の組合せです。これを内服することによって、避妊、生理前後のつらい症状を抑えたり、更年期症状を抑えたりします。
現代の女性は以前と比べ、より長い年月を生理と付き合っていかなくてはなりません。何より重要なことは、女性が自主的に生理・妊娠をコントロールしライフプランをたてる選択の一つにピルがあります。もちろん、メリット、デメリットを考えつつ使用するのは有意義なことだと思われます。
・更年期障害
・生理不順・月経痛・PMS
・生理をずらしたい
・その他
■OC(ORAL Contraceptives):オーシー
=低用量経口避妊薬
避妊専用のピルで、自費となります。
■LEP(LOW dose Estrogen Progestin):レップ
=超低用量・低用量ピル
治療目的のピルで、保険扱いとなります。
低用量ピルが解禁になる前は治療用のピルが使われていましたが、濃度が高く副作用も強く怖いイメージでしたが低用量になり改善され多種類のピルが存在します。さらに濃度が低くなった超低用量ピルも治療に使用されるようになってきています。
①避妊:正しい飲み方で99%の効果が期待できます。
排卵を抑える効果、子宮内膜を薄くして受精卵が着床しづらくなる効果、子宮頚管粘液を変化させ精子が侵入しづらくなる効果により避妊をします。
②月経痛の改善:月経時に日常生活に支障がでる場合を月経困難と言います。
生理時に出現する痛み物質(プロスタグランジンなど)を抑える効果もあるといわれています。これと出血の量と月経期間を短縮することによって生理痛を改善します。
③月経不順の改善:生理を整える
生理不順の原因は様々ですが、整理が予定通りに来ない場合には日常生活に困ることが多々あります。たとえば、試験、大会、旅行など大切な用事に生理が重なっては困る場合など。ピルの子宮への働きかけにより生理が規則正しく来るよう調整します。また、飲み方により日程も調整することができます。
④生理前の不快な症状を抑える
女性ホルモンの変動の影響で生理が始まる3~10日前後から様々な不快な症状が出ることがあります。
月経前緊張症=PMS(PRE Menstrual Syndrome)
さらに、精神症状が強くうつ状態になるものをPMDD(Premenstrual Dysphoric Disorder)といいます。これらの症状を緩和する効果を期待できます。
⑤にきびなど皮膚症状の改善
ピルに含まれている黄体ホルモン(プロゲステロン)のなかにはニキビの原因の一つの男性ホルモンを抑える作用をもつものがあります。
⑥子宮内膜症の治療
子宮内膜症とは子宮の内側の膜が子宮以外のところで増殖してしまい、月経時にそこから出血を起こします。卵巣が腫れたり(チョコレート嚢腫)、子宮が腫れたり(子宮腺筋症)、骨盤の中で癒着(腹腔内癒着)します。症状は生理痛が主なものですがひどいと痛みは多岐・広範囲にわたり生理以外の時も症状が出現します。たとえば、性交痛や排便痛など。普段、生理痛が強く鎮痛剤を内服しても日常生活に支障がある方は隠れた内膜症として要注意です。ピルにより子宮内膜の増殖を抑え込み、症状の改善および発症の予防をします。
⑦貧血の改善
女性の貧血は他の病気がない限り月経血量に大きく作用されます。普段の食事よりもインパクトが大きいと思われます。
⑧排卵痛の改善
現代人は少子化および初潮の低年齢化によって以前より生理と長い間付き合っていかなければなりません。それによって、卵巣や子宮や乳腺に負担がかかり、ガンのリスクが上昇しているといわれています。 また、その他のガンの予防効果も報告されています。
【生理を月に一度起こすタイプ】
■21日タイプ(1シート21錠):飲み忘れしない方
初回は月経が始まった初日から内服開始します。21日間内服の後7日間休薬し新しいシートの内服を開始します。休薬期間に生理が来ます。
■28日タイプ(1シート28錠):飲み忘れがちな方
初回は月経が始まった初日から内服を開始します。休薬期間はなく毎日内服し、シートが終わったら続けて次のシートの内服を開始します。プラセボ(偽薬)期間に生理がきます。
【生理を起こさないタイプ】
■フレキシブルタイプ:できる限り生理を起こしたくない方(1シート28錠)
主に治療目的に使われます。LEP製剤の超低用量ピルに当たります。初回は月経が始まった初日から内服を開始します。休薬期間はありません。内服中に普段の生理と同じくらいの出血が3日間続いたら4日間内服を休みます。(最大連続内服は120日間) 最近ではこちらを希望される方が増えています。他のピルと比べてのリスク、副作用は変わりません。
低用量ピル以前の治療用ピルは含まれるホルモン量が多く副作用も強かったため、マイナスなイメージがありましたが、低用量ピルはホルモン量も少ないため副作用も低く、種類もたくさんあるのでその人のニーズに合わせて処方ができます。「ピルは怖い」「ピルは太る」は過去のイメージです。
①マイナートラブル:症状の多くが1~2ヶ月以内で落ち着きます。
・吐き気
・頭痛
・乳房の張り
・不正出血
・むくみ
②重大な副作用:血栓症
「血栓症」とは血管に血のかたまり(血栓)が詰まる状態です。非常にまれですが、出現したら早急な対応が必要です。
(当院では飲み始めて一ヶ月以内に採血によりDダイマーを調べ血栓ができやすくなっていないか測定します)
【手足】
突然の足の痛み、腫れ、手足の脱力
【胸部】
激しい胸の痛み、突然の息切れ
【頭部】
激しい頭痛(チカチカ、キラキラ、閃光)
【腹部】
激しい腹痛
【口】
舌のもつれ、しゃべりにくい
【目】
突然見えにくくなる
①問診:服用に適しているかどうかのチェック
避妊用(OC)なのか治療用(LEP)なのかニーズに合ったピルの選択をします。
②血圧・体重・身長
③必要であれば内診・超音波・子宮がん検診・採血
④処方(初回は一ヶ月分)
⑤次回来院時:Dダイマー採血、血圧・体重
「血栓症」は内服開始一ヶ月以内のリスクが高いため、2回目の処方時にチェックをします。
ピルはホルモンの作用により排卵を抑え込んでいます。しかし、飲み忘れてしまうと卵巣での卵胞が発育してしまい、その抑制がとれてしまいます。以下のWHOの考え方を参考にしてください。
と考えると分かりやすいかもしれません。
念のため2錠忘れた場合も7日間は避妊されたほうが無難です。
「避妊に失敗してしまった」「避妊をしなかった」「望まない行為だった」といった時の緊急回避用のピルです。
作用は下記の三つです。
①排卵を遅らせる
②子宮への精子の侵入を防ぐ
③着床を妨げることにより
※ある程度まで妊娠の確率を下げられますが100%ではありません。
また、現在日本では保険がききませんので高価ですが、通信販売と違って信用できる薬剤です。
性交後72時間以内に来院(できるだけ早く)
⇒問診後処方
⇒ただちに緊急避妊薬を一錠内服
⇒生理が来るまで避妊
注意)予定の生理が前後することがあります。
生理が予定の一週間遅れるようであれば妊娠検査薬を使用してください。
*緊急避妊薬:レボノルゲストレル錠1.5mg(先発品)料金はこちら
注意)ピルと同様な避妊効果を期待できますが、100%ではありません。
生理が遅れたり、生理の量が少なかった場合は避妊の検査をしてください。
【初診】
問診・説明…適しているかどうか確認
診察…超音波検査によって子宮筋腫など子宮に異常がないかどうか、必要によって子宮がん検診
【再診】
生理が到来後(妊娠をしていないことが確実であるため)
ミレーナ挿入
【定期チェック】
3ヵ月後、6ヵ月後、1年後
以後は一年ごと
*ミレーナ(子宮内システム=IUS)について
黄体ホルモンを持続して放出する子宮内システムです。レボノルゲストレルというホルモンが子宮に作用して内膜を薄くし、月経血の量を減らしたり月経痛を改善します。この作用により受精卵の着床を妨げたり、子宮頚管の粘液の性質を変化させ、精子の侵入を妨げ避妊効果が発揮されます。子宮局所に作用するため血液にはほとんど影響がないため、喫煙中・肥満・授乳中・肝臓の機能の悪い方などピルが服用できない方にも使用可能です。
料金 | |
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避妊用ピル | ¥3,000 |
アフターピル (緊急避妊用) | ¥10,000 |
ノバT | \35,000前後 ※診察内容によって異なります |
ミレーナ | ¥40,000 ※保険診療の場合¥10,000前後 |